【社長ブログ】パッシブハウスのデメリットとは? 一般的な普及住宅、高断熱 高気密 住宅 と 比較して考えてみた
Contents
冬も ほとんど 暖房を 使わない家 パッシブハウス 6つの要素
パッシブハウスジャパンHP「CONCEPT:パッシブハウスとは」より https://passivehouse-japan.org/ja/concept/
パッシブハウスとは ?
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▼パッシブハウスで暮らしが変わる▼
パッシブハウスジャパンのHP、ご覧いただけましたか?
圧倒的に快適でしかも超省エネなパッシブハウス。
そんなパッシブハウスのデメリット。気になるのは…『お値段』ですね。
性能が良い分、高くなります。
でもその話、ちょっと待った。
それは建てる時にかかる 建設コスト だけで考えた場合です。
家の断熱性能が高くなればなるほど、将来的にかかる冷暖房費のコストは下がる
という関係にあります。
建設コスト だけではなく
家の燃費他、将来かかる費用を合わせた トータルコスト で考えた時、
パッシブハウスは決して高くないかもしれません。
熱が逃げない、暖房がほとんどいらない家
パッシブハウスをつくる6つの要素は
- しっかりとした断熱
- 空気の漏れをなくすこと
- 熱橋をなくすこと
- 性能の良い窓
- 窓の向き+日射遮蔽
- 熱交換換気
パッシブハウスが「【ファーストクラス】の、エコ。」とすれば
高断熱高気密住宅は【ビジネスクラス】
一般的な普及住宅は【エコノミークラス】でしょうか。
それぞれのクラスが具体的にどのぐらいなのか、
温暖地域(Ⅵ地域)を例に1つずつ掘り下げて見ていきます。
「しっかりとした断熱」
断熱性能の指標「Ua値」
1つ目「しっかりとした断熱」
外気温の影響を少なくする。
その断熱性能の指標として使われるのが
どのくらいの熱が逃げるか(冬)
どのくらいの熱が入ってくるか(夏)
を数値で表した
U値(熱貫流率)・Ua値(外皮平均熱貫流率)です。
Ua値は「 熱損失量の合計 ÷ 外皮表面積 」で 求めることができます。
具体的に言うと…
+窓のU値×面積(=窓の熱損失量)
+屋根のU値×面積(=屋根の熱損失量)
+外壁のU値×面積(=外壁の熱損失量)]
÷
基礎表面積+窓表面積+屋根表面積+外壁表面積
家のそれぞれの部分の熱損失合計を
家全体の表面積で割って平均を出したものです。
つまり
Ua値が低いほど断熱性能が高いということになります。
日本の断熱基準
※一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構HPより
日本には「平成25年省エネルギー基準」という基準があります。
南北に長い日本は地域によって気候が異なりますので、日本の国土を8つに分けて基準を設けています。
平成25年省エネルギー基準「Ⅵ地域」での 断熱性能基準はUa値0.87。
それってどのくらいの数値なのか?
【エコノミークラス】一般的な普及住宅
Ua値:0.87~0.56(0.56はHEAT20のG1です)
【ビジネスクラス】高断熱高気密住宅
Ua値:0.56~0.46(0.46はHEAT20のG2です)
【ファーストクラス】パッシブハウス
Ua値:0.2台(HEAT20のG3同等です)
具体的な仕様は
【エコノミークラス】一般的な普及住宅
壁の充填断熱 75mm(グラスウール換算)
天井または屋根の断熱 100mm(グラスウール換算)
窓 樹脂アルミペアガラス(Uw=2.33)
【ビジネスクラス】高断熱高気密住宅
壁の充填断熱 105mm(グラスウール換算)
天井または屋根の断熱 150mm(グラスウール換算)
窓 樹脂ペアガラス(Uw =1.7)
【ファーストクラス】のパッシブハウスにするには
さらに付加断熱を足して、窓をトリプルガラスに変える必要があります。
Ua値が小さくなるほど断熱性能が良くなるのですが「Ⅵ地域」の断熱性能基準はUa値0.87。
2022年10月に断熱性能基準の見直しが図られ、
ようやくこれまでの断熱等級基準「断熱等級4」が最低ラインになりました。
ちなみにパッシブハウスは「断熱等級7」です。
世界はどうなのか?
ヨーロッパはもちろんですが
お隣の中国や韓国も日本の目標最低値よりも厳しい基準です。
日本の基準をクリアするだけで本当によいのでしょうか?
「空気の漏れをなくすこと」
気密とは?
2つ目は 空気の漏れをなくすこと。
それはつまり、気密性能を上げること。
家に着せる服を断熱材とすると
家の内側の断熱、インナーが「充填断熱」
家の外側の断熱、アウターが「外張り断熱」というイメージでしょうか。
「服をたくさん着ていても
アウターのチャックが全開になっていたら服の中は全然暖かくならないよね」
ということです。
気密性能の指標として使われるのが C値(相当隙間面積)です。
C値は
建物全体にある隙間面積(cm2)÷ 建物の延べ床面積(m2)
で求めることができます。
家全体の隙間の大きさを表すので
数値が小さいほど空気の漏れが少なく気密性能が高い、ということになります。
例えば
C値=1.0(cm2/m2)だったら
10m×10mの建物の中に10cm×10cmの隙間がある、
というようなイメージです。
【エコノミークラス】一般的な普及住宅
C値: 3.0~5.0(cm2/m2)
【ビジネスクラス】高断熱高気密住宅
C値 :0.6~1.0(cm2/m2)
【ファーストクラス】パッシブハウス
C値:およそ 0.2(cm2/m2)以下(50Paの加圧時の漏気回数0.6回以下)
空気の漏れがあるとせっかく暖めた空気も外へ逃げてしまいます。
単純に空気の漏れがない状態の方が望ましいですね。
気密測定、していますか?
C値は
有資格者である気密測定技能者がJISの測定方法に基づき
機械を使って測っているので、誰が測っても同じになります。
これから会社選びをされる方は参考までに担当者にぜひ聞いてみてください。
“気密測定をしていますか?”
実は気密測定を行っている会社は非常に少ないです。
「測定まではしていません」という会社ならまだ良いです。
(自社は気密性能がイマイチです、と言っているも同然ですが)
痛いところを突かれるのが嫌で、
「気密性能を上げ過ぎると●●」のような否定的な返事をする会社も存在します。
気密測定
するべきか?しないべきか?
著書多数。
自立循環住宅やCASSBEの講習会で講師を務める高断熱・高気密のパイオニア。
断熱関係の専門ジャーナリスト南雄三さんの格言です。
「断熱したら気密しろ!」
…その会社さんたちは南雄三さんとは考え方が違うようですね。
「熱橋 を なくすこと」
熱橋 とは?
熱が逃げない、暖房がほとんどいらない家
パッシブハウスをつくる6つの要素
3つ目は 熱橋をなくすこと 。
「熱橋」とは?
インナーが「充填断熱」、アウターが「外張り断熱」とすると
日本の断熱性能基準はなんと外張り断熱のアウターなしでもクリアできてしまうレベルなのです。
実際日本では
アウターを着ている、付加断熱を行っている家はほとんどありません。
多くの家が充填断熱のみです。
…もしその充填断熱に隙間があったらどうなるか。
柱と柱の間に断熱材を入れていく。
丁寧に施工しても柱と断熱材の間に隙間がないように施工するのは結構難しいです。
隙間が出来て断熱欠損になると熱の伝わり方が変わります。
また、柱の部分は
断熱材よりも熱が伝わりやすい 熱橋(ヒートブリッジ)となります。
他に
- 基礎のコンクリート
- 窓枠のアルミ
も大きな熱橋となります。
さらに取り付け方や取り付けの位置でも熱の伝わり方は変わります。
日本では柱や梁の熱橋部分はUaの計算に含まれるものの
その他の熱橋による熱の逃げは計算されません。
計算されなくても存在しているのですが。(笑)
では「熱橋をなくす」にはどうすればよいのでしょうか。
最も簡単な方法は家全体を隙間なく外側から「断熱」する。
外張り断熱を付加する、付加断熱することです。
【エコノミークラス】一般的な普及住宅
付加断熱採用なし、熱橋の考慮なし
【ビジネスクラス】高断熱高気密住宅
付加断熱採用なし、熱橋の考慮なし
【ファーストクラス】パッシブハウス
付加断熱必須、熱橋の軽減
付加断熱が必須なファーストクラスのパッシブハウスは
結果的に熱橋を軽減していることになっているのです。
エコノミークラスやビジネスクラスでは付加断熱は採用されていません。
ビジネスクラスでは構造金物や隙間をウレタンでスプレーしているくらいでしょうか。
「性能の良い窓」
窓は 景色や 光 を取り込む以外に…
4つ目は 性能の良い窓
- 【眺め】そこからみえる景色が暮らしを豊かに
- 【光】 家を明るく
- 【換気】新鮮空気に入れ替え
色々な機能がある窓ですが、家の中で最も熱が逃げる場所でもあります。
そのため窓の断熱性能を高めることが家全体の断熱性能を高めるために重要となります。
窓の断熱性能(U値)はUwで表されます。
【エコノミークラス】一般的な普及住宅
樹脂アルミ(ペア)窓 Uw=2.33(W/㎡・K )
【ビジネスクラス】高断熱高気密住宅
樹脂ペアガラス窓 Uw=1.7(W/㎡・K )
【ファーストクラス】パッシブハウス
樹脂トリプルガラス窓 Uw=1.2(W/㎡・K )を下回る
パッシブハウスの認定を受けようとすると
年間冷暖房負荷15kWh/㎡を下回ることは必須なので
窓の性能がUw1.2でも厳しくなります。
木製サッシではUw=1.0を切る窓もあります。
世界最高の窓はUw=0.7。
それは弊社が製造する
「窓の向き+日射遮蔽」
じゃあ 大きい窓は 必要ないの?
窓の機能は実はもう一つあります。
パッシブハウスをつくる6つの要素
5つ目は 窓の向き+日射遮蔽
窓は最も熱が逃げる場所でありながら、
日射の熱を取り込むと冬は「暖房器具」になるのです。
【エコノミークラス】一般的な普及住宅
窓の向き+日射遮蔽の考慮は任意、日射を含めた冷暖房負荷を計算しない
【ビジネスクラス】高断熱高気密住宅
窓の向き+日射遮蔽の考慮は任意、日射を含めた冷暖房負荷を計算しない
【ファーストクラス】パッシブハウス
窓の向き+日射遮蔽は必ず考慮し、日射を含めた冷暖房負荷を計算する
エコノミークラスやビジネスクラスの日射取得・遮蔽の考慮は任意ですが、
ファーストクラスのパッシブハウスは必ず
季節ごとの日射角度や周囲の建物の影も考慮して窓の位置や大きさ庇・軒の出を調整し、
冬は日差しを取り込んで夏は日差しを入れない設計をします。
【冬】
南向きの窓・東向きの窓・西向きの窓は全て日射を取り入れる窓。
断熱性能が高ければ窓は「暖房器具」に。
【夏】
太陽高度は冬低く、夏高い。また朝・夕は低く、昼は高い。
南向きの窓は太陽高度が高いので、庇や軒の出を調整すると遮れる。
でも、東向きと西向きの窓は遮れない。
外付けのロールスクリーンが必要となる。すだれやよしずも有効です。
あの手この手で日射を遮ることができれば、
「クーラーBOX」として少ないエネルギーで家中冷やすことができます。
「熱交換換気」
換気の方法 は「窓を開ける」だけじゃない!
タナカホームHP 住宅設備「Zehnder Comfohome」ページより https://tanakahome.jp/equipment/zehnder-comfohome/
パッシブハウスをつくる6つの要素 最後は 熱交換換気
換気の目的は「水蒸気」「CO2」「臭い」を排出し、新鮮空気と入れ替える事。
ただ、冬は外の冷たい空気を入れて屋内の暖房された空気を捨ててしまう。
入れ替えた新しい空気を暖めるのにまたエネルギーを消費することに。
家の外皮から逃げる熱を断熱性能の数値Ua値で“熱損失”として見るのに、
換気によって逃げる熱は気にならない…はずがないですよね。
換気システムは窓を開けずに必要最低限の換気ができます。
「熱交換換気」とは“熱”を残したまま
室内の空気を外の新鮮な空気と入れ替えることが出来る換気システムのこと。
【エコノミークラス】一般的な普及住宅
熱交換換気システムの導入なし
【ビジネスクラス】高断熱高気密住宅
熱交換換気システムの導入は任意
【ファーストクラス】パッシブハウス
熱交換換気システムは必ず導入する
ファーストクラスのパッシブハウスは
熱交換換気システムを使う事で、
最低限の設備で冷暖房負荷の少ないエネルギーを出来るだけ使わないエコな暮らしが叶います。
熱を逃がさずに換気したい。
さらに換気風量をコントロールしようとすればダクト式となるのですが、
ダクトで各部屋に新鮮空気を送れるのであれば空調した空気を送りたい。
そもそもパッシブハウスであれば空調する温度も少ないはず。
そこで「アメニティーエアコン」
換気システムとエアコンをドッキングして空調しちゃおうという夢のシステムです。
温暖地域6地域では夏の湿度も下げたくなる。
夏のジメジメの時期にもサラサラの空気感を実現できます。
パッシブハウスのための換気システム「Zehnder」とは?>>
それ、本当に安い家? 未来を見据えた 後悔しない家づくり
これまでパッシブハウスをつくる6つの要素についてお話してきました。
本物の飛行機なら、
エコノミークラスからビジネスクラスのアップグレードに倍の金額がかかり、
ビジネスクラスからファーストクラスのアップグレードにさらに倍の金額がかかります。
つまりエコノミークラスからファーストクラスにアップグレードするのに
約4倍の金額がかかります。
生涯で何度も乗る飛行機は「少しでも安く乗りたい」と思うのは当然かもしれません。
しかし、一度きりの「家」への搭乗。
一般的なエコノミークラスの何倍もの金額がかかるわけではありません。
数年前まではパッシブハウスをつくるための材料がなかなか手に入らなかったのですが、
今は手に入るようになりました。
パッシブハウスはここから先、どんどん安く建てられるようになっていきます。
本当に高くないか、トータルコストでチェックしてみませんか?
投稿者:佐藤大治